お通夜や告別式など、失礼があってはいけないと思うほど緊張してしまったり、マナーがよくわからないという人もいるでしょう。
とくに神道のお式は、あまり多くはありません。仏教のお葬式と神道のお葬式では何が違うのでしょうか。今回は注意したいマナーについて紹介します。
神道とは
神道とは、日本には発生した古くからある民俗信仰です。主に自然である山や川や海などに神が宿っているとして祀るものと、先祖や偉業を成し遂げた人や、非業の最期をむかえた人などを、神として祀るものがあります。代表的な神社に、太宰府天満宮や靖国神社があります。
古来の民間信仰が、外来思想である仏教や儒教などの影響を受けつつ、現代のような形になったといわれています。
仏教との違い
神道と仏教の違いは、祀られている本尊の違いです。
仏教は、紀元前5世紀ごろに釈迦がインドで説いた教えです。迷いや苦しみの多い現世を超越し、悟りを開いて涅槃に至るという教えです。
日本には6世紀の中ごろ、朝鮮半島を経由して伝来し、鎌倉時代の武家文化と結びつき、同じころ親鸞などの台頭により、民衆に広まったと考えられています。
お寺に祀られているのは、開祖である釈迦で、世界三大宗教の一つです。
キリスト教との違い
キリスト教は、イエスを救世主(メシア)として認め、「メシア」のギリシア語訳の「キリスト」を冠した宗教です。
キリスト教の神が唯一で、父としての神であるという教えです。日本の神道の神様とは別の存在です。
仏教・イスラム教と共に世界三大宗教の一つであり、最大の信者数を誇る普遍宗教でもあります。
神道のお供えのマナー9つ
お供えとは、神様や仏様にお供えする飲食物や、そのほかの品物、またそれに代わるお金などを言います。
とくに神前に供えるお供えは、神供(じんく)または神饌(しんせん)といいます。仏前にお供えするお供物とは区別しています。
神饌は主に、生産や収穫・収獲した物を神にお供えし、人と神が同じ物を共に食するという意味が込められています。
仏教のお供物は仏に対する信仰の意味なので、神道のお供えとは違いがあります。
神道のお供えのマナー1:神道のお供えにふさわしいもの
神道でのお供えの神饌には、海産物・お酒・五穀(米・麦・粟・豆・黍など)を供えます。
また、故人が好きだったものをお供えするのもよいでしょう。飲食物をお供えするときには、季節などにもよって、日持ちがするものを選ぶように心がけましょう。
おせんべいやクッキーなどの焼き菓子、羊かんなどは無難ですし、量なども調節しやすくお供えには向いているでしょう。旬の果物などは、お店で盛り籠にしてもらうとよいでしょう。
神道のお供えのマナー2:お供えの金額の相場
神道のお供えに限ったことではなく、どの宗派宗教でも、おおよその相場というものは、だいたい同じくらいと考えてよいでしょう。
お供えを品物の代わりに現金で渡す場合は、5,000円から10,000円くらいを包みます。とくに故人との関係が親しいときには、20,000円から30,000円の間が相場といえます。
神道のお供えのマナー3:神道のお供えにふさわしくないもの
神道では、仏教と違って食べ物のタブーはあまりありません。
仏教では、肉や魚などの生ものは禁忌とされていますが、神道はお供えに収獲(穫)したものを奉る習慣があります。そのため、海産物などもお供えすることができるのですが、時代とともに仏教の影響からか、4本足の動物の肉は避けるようになりました。
線香などの香りは、仏様の食事として位置付けられていますので、神道ではお線香・抹香などはお供えしません。
神道のお供えのマナー4:のし紙の選び方
一般にのし紙といわれるものは、右上に「のしあわび」が付いているものをさします。そのほかのものは「掛紙」と呼びます。違いとしては、のし紙は慶事用で、掛紙は弔事その他用と区別することができます。
のし紙にもいろいろなものがあり、柄や透かし、型押しなど模様の入ったものがあります。神道の場合には、蓮の花や十字架があしらわれているのし紙は使用できませんので、注意しましょう。
神道のお供えのマナー5:のし紙の表書きの書き方
神道・仏式どちらにも使える弔句が「御供」です。葬儀に限らず、法要のときのお供えにも使えます。迷ったときは「御供」と書いておきましょう。
そのほかに神道のみで使えるのは「奉献」「奉納」です。物をたてまつること、神にささげるなどの意味があります。「御神前」は、霊前に供える品物にもお金にも使えます。
送る側の名前はフルネームで書きましょう。3人までの連名であれば、目上の人を右側にして、左側へ書いていきます。
神道のお供えのマナー6:供花について
神道では、葬儀や法要などの最中にお焼香の代わりに榊を供えます。榊は神木とし神社の境内などに植えられ、枝や葉を神事に用いるからです。
仏式のお葬式では、祭壇にお供えのお花がたくさん飾られている、という光景を見ることができますが、神道ではとくにそのようなしきたりはありません。飾ってはいけないという決まりはありませんが、喪主の方に確認などをするとよいでしょう。
お花の種類は、仏式と同様白い花がよいでしょう。
神道のお供えのマナー7:香典の相場
神道では、お香・お線香はお供えしないのでお香典を、「真榊料」「玉串料」と呼びます。
包む金額の相場というのは、仏式も神道でも違いはありません。年代や故人との関係の近さ、地域によって差はあります。
若い独身の方などは5,000円くらいまで、一般的なお付き合いであれば法要のみで5,000円から10,000円ほどが相場でしょう。
神道のお供えのマナー8:不祝儀袋・水引の選び方
神道出会っても不祝儀袋は特別なものでなく、市販の不祝儀袋で構いません。水引も白黒のものか銀色一色の結び切りの物を選びましょう。
注意したいのは弔句がすでに印刷されている不祝儀袋を選ぶ際は、仏式の物を使わないということです。「御玉串料」「御神前」「御供」などが使用できます。
神道のお供えのマナー9:不祝儀袋の表書きの書き方
神道では「仏」や「香」といった言葉が教義にはないので使わないように気をつけましょう。
のし紙の項目でもふれましたが、自分の名前はフルネームで、弔句よりも少し小さく控えめに書きます。夫婦連名の場合は、夫の氏名を右側に書いて、妻の名前のみを左側に書きましょう。
神葬祭で気を付けたいマナー
悲しみの知らせを受け、いざ式に参列するときに、しきたりやマナーでわからないことがあると不安に感じてしまうも人も少なくありません。
神道と仏式で大きく違うのは、お坊さまが故人のためにお経をあげるのではなく、神職が祭詞(祝詞)を奏上するという点と、参列者がお焼香をするのではなく、祭壇に玉串を奉って拝礼するというところです。
そのほかのマナーや気をつけたい点を、3つにまとめてみました。
神葬祭で気を付けたいマナー1:数珠は使わない
お葬式に参列するとなると、喪服と数珠と袱紗を用意しなくては、と考えますが、それは仏式の場合です。
神道では数珠を持つことはありません。もともと数珠は、仏や菩薩を拝むときに使われる仏具の一種です。これは、念仏の回数を数えるために用いられ、宗派によって多少の違いはありますが、珠の数が煩悩と同じ108個とされていて、煩悩を取り除くためとも言われているからです。
神葬祭で気を付けたいマナー2:服装は一般的な喪服で
神道でも、式に参列するときはいわゆるブラックフォーマルや喪服と呼ばれる服装で問題ありません。もちろん和装の黒五つ紋付も着用できます。
男性・女性共に、セットになったスーツやワンピースなどに、靴は黒一色で飾りのないものを履きます。女性のアクセサリーは、結婚指輪は構いませんが、ファッションリングは外しましょう。
また、急なお通夜の参列の場合には、なるべく地味な服装に、黒い喪章をつけて参列しても大丈夫です。
神葬祭で気を付けたいマナー3:「冥福」「成仏」「供養」という言葉はNG
葬儀の場で、ご遺族にかけるお悔やみの言葉として使われる「ご冥福をお祈りいたします」は、神道では使えません。
同様に「成仏」や「供養」も仏教用語ですので、宗教自体が別な神道ではNGとなります。
宗教の競技というものは、信仰上の教えとしてとても重要です。間違えたり、そのつもりがなくとも、否定するような表現を使わないように注意しましょう。
神道のお供えのマナーを知ろう
神道に限らず、悲しみの席ではマナーやしきたりに十分配慮しましょう。
遺族が悲しみにくれているときは、いずれも普段であれば流してしまうであろう些細なことが気になったりするものです。
しかし、あまりマナーばかりに気を取られて、大事なことを忘れてはいけません。どのような宗派宗教であっても、悲しみの席では故人を偲ぶということが一番大切です。その気持ちを忘れずに、マナーにも気を配りましょう。