世界にはさまざまな葬法があります。日本では火葬が一般的ですが、風葬という葬法があることを知っていますか。
今回はこの風葬という葬法に注目していきます。日本でこのような葬法が行われていたなんてと驚くこと間違いありません。ぜひチェックして下さい。
風葬とは
風葬とは遺体を埋葬することなく自然の中に安置し、風、雨など自然の営みに任せ遺体を風化させていく葬法のことを言います。風葬は曝法、また空法と呼ばれることもあります。風葬は遺体に衣類を着せたまま行い、棺に遺体を入れたり、小屋を造りそこに遺体を安置するなどして風化させていきます。
インドネシアの風葬
インドネシア・バリ島北部の秘境にあるトルニャン村は、風葬の村と呼ばれるほど風葬が盛んに行われています。トルニャン村から少し離れたところに墓地があるのですが、墓地に一歩足を踏み入れるとそこには風葬により風化し骸骨となった遺体がたくさんあります。
トルニャン村では、竹かごの中に遺体を安置し風葬を行います。想像するよりもはるかにきれいな状態で安置され、遺体には意外にも臭いがないとのことです。
沖縄の風葬について
遺体を自然の中に安置し、風、雨など自然の営みに任せ遺体を風化させていく風葬は日本ではなかなか見られない葬法です。しかし、実は以前沖縄で盛んに行われていた葬法となっています。沖縄でどのように風葬が執り行われていたのかということについて紹介していきます。
1:風葬を行う場所
風葬を行う場所についてですが、一般的に風葬は人目が付かない場所で執り行われていました。沖縄では主に海岸や洞窟で風葬が行われていたと言われています。沖縄の風葬がなぜ海岸や洞窟で執り行われていたのかということについて、詳しく紹介していきます。
海岸
沖縄は島であるため海に囲まれており、海岸線が長く続いています。海岸は潮風が強く吹くことが多いため、風葬を行う際、短い期間で遺体の風化が進んでいったと言われています。
沖縄の海岸で多くの風葬が執り行われていたと言われていますが、特に多かったのは沖縄本島南側にほど近い久高島です。風葬が多く執り行われていた久高島は神の島と呼ばれており、海岸の岩場に木で作られた棺を設置し、遺体を中に入れ風化させていたと言われています。
洞窟
沖縄の風葬は海岸が一般的でしたが、洞窟でも多くの風葬が執り行われていたと言われています。洞窟の中に遺体を安置し風化させることで、沖縄の方は風葬を執り行っていました。
沖縄の洞窟での風葬は、離島である久米島で行われていたという例があります。久米島にある洞窟、風葬墓(ヤジャーガマ洞窟)では多くの風葬が行われたという事実があり、多くの遺骨を入れた骨壺が洞窟内に納められています。
2:洗骨する
洗骨とは風葬を行った後、風化した頃合いで死者の骨を海水で洗い、再度風葬を行うことを言います。沖縄では仙骨されていない遺骨はけがれているとされ、神仏の前に現れてはいけないとされていました。沖縄では、洗骨は親族の女性により行われるもので、特に長男の嫁が行うべきものであると言い伝えられていました。
洗骨は戦後に行われた女性解放運動、保健所の衛生指導の下、現在で行われることはめったにありません。
海水や井戸水などで洗い清める
沖縄の風葬を執り行うときに行われていた洗骨は、多くが海水を使用して行われており、また井戸水を使用して行われることもありました。海岸で洗骨を行うときは海水で、洞窟で洗骨を行うときは井戸水で洗い清めていたのでしょう。
3:骨壺に納めてお墓に入れる
風葬が終わった遺骨は骨壺へと納められ、お墓に入れられます。洞窟で風葬が行われていた場合は洞窟内に骨壺を納めていました。当時風葬が執り行われた久米島のヤジャーガマには、洗骨が行われた後の遺骨を入れた骨壺が多く納められています。
複葬
風葬は、遺骨を安置し風化させ洗骨を行った後、埋葬という形をとるため、複葬とか二回葬と言われることもあります。風葬あるいは複葬は、沖縄では神仏の前に現れても大丈夫なようにとの目的で、他の国では埋葬だけでは死霊のままで病や死をもたらす危険なものと考えられていたことから、洗骨し第2の葬儀を執り行うことで子孫に幸福を呼び込むために行われました。
4:風葬をした理由
当時沖縄には遺体を火葬することのできる火葬場が少なく、火葬できずにあぶれてしまう遺体の数が少なくなかったそうです。また沖縄の地形にも、風葬をした理由はあります。沖縄は島であるため、遺体を火葬することができたとしても遺体を埋葬することのできる土地が限られているため埋葬することができませんでした。
このような理由から、日本では沖縄地方のみで風葬が執り行われていたのではないかと言われています。
現在の沖縄の葬儀
沖縄で風葬が執り行われていたのは、第2次大戦前までと言われています。現在風葬は衛生的に見て良くないという理由から保健所を中心として禁止措置が取られており、執り行われることはなくなりました。では、現在の沖縄ではどのような葬法が行われているのでしょうか。沖縄で行われてる葬法について紹介していきます。
ほとんどが火葬
現在沖縄で執り行われている葬法の多くが火葬となっています。戦後に火葬が多く広まったこと、洗骨の風習に対する女性解放運動、そして保健所の指導の下などが要因となり、風葬ではなく火葬が広く執り行われることとなりました。女性解放運動により、沖縄に火葬場が増えたと言われています。
離島では風葬も
沖縄の多くで執り行われている火葬ですが、離島にはまだ昔の風習が色濃く残っており、風葬を執り行っているケースも少なくありません。しかし、現在執り行われてる風葬を私たちが目にすることはほとんどないと言えるでしょう。親族間で人目の付かないところでひっそりと現在の風葬は執り行われていると言われています。
風葬以外の葬儀
私たちが知る葬法といえば火葬が一般的です。そのため今回、風葬というなかなか衝撃的な葬法が行われていたということに対し驚いたことでしょう。実は世界では風葬だけでなく、他にも驚きの葬法が執り行われ遺体が供養されています。世界でどのような葬法が執り行われているのかみていきましょう。
鳥葬
中国やチベット内モンゴルでは鳥葬という葬法が執り行われていると言います。鳥葬はハゲワシなど肉食の鳥に遺体を食べさせ供養するという葬法です。故人の魂を天へと送り届けるため、生命を繋ぐために鳥葬は執り行われていると言われています。鳥が食べやすいよう遺体を解体し執り行うということでなかなか衝撃的な葬法となります。
獣葬
アフリカ・ケニア、タンザニアに住むという民族、マサイ族は獣葬という葬法を執り行っています。獣葬はアフリカに住むハイエナなど肉食動物に遺体を食べさせるという葬法です。大地にお墓を建てることは良くないという考え、生命に命を繋ぐために獣葬は執り行われていると言われています。
日本以外の国では生命に命を繋ぐということが重視される傾向にあります。
葬儀の形式に込められた意味を知ろう
沖縄で行われてきた風葬について紹介していきました。同時に今回はさまざまな葬法を見ていきましたが、さまざまな意味を持ち過去に遺体を供養していたのか分かったのではないでしょうか。
今回紹介した沖縄の風葬ですが、洞窟で行われていた風葬、ヤジャーガマ洞窟は現在鍾乳洞ツアーとして中に入ることができ、風葬が行われていた場所に立ち入ることができます。風葬が執り行われた神秘な場所へ足を踏み入れてはいかがでしょう。