この記事では、人が死んだときに施す、死化粧について説明しています。
また、順番を追った方法や、湯灌とエンバーミングとの違いについて紹介しています。死化粧は故人の死を受け入れるためにも大切な儀式です。 少しでもきれいな状態で送ってあげるために死化粧の知識をつけましょう。
死化粧とは
死化粧とは、死亡した故人の遺体をお送りする際に、身なりを綺麗に整えた後にする化粧の事です。男性ならば髭や無駄毛を剃ったり、女性ならば、業者の方が安らかに寝っているように薄く化粧したり、故人が生前に好んで化粧品を使用したりします。
実際のお通夜や葬儀で、故人と遺族の方などが最後に対面するお顔を、より良く見てもらうために施す化粧の事を指します。
エンジェルケアとの違い
死化粧の前の準備段階がエンジェルケアです。エンジェルケアとは、病院などで死亡した人に対して、体を綺麗に清めたり、身なりを整えたり、綿を詰めたりする一連の作業をいいます。
昔は、家庭で行う場合も多かったのですが、現代は病院で亡くなられる人が多いので、病院や専門の業者が主に行ってます。
死化粧の費用
死化粧のお値段は、葬儀会社によって違いますが、一般的には3~10万円が相場です。ただし、この手の費用は天井知らずで、故人を盛大に送り出してあげたい気持ちに付け込む、悪徳業者も存在するので注意が必要です。
また、故人の遺志や、遺族の強い思いで、親族が行う場合は、当然0円で済みます。
死化粧の方法について7つ
この章では、死化粧について7セクションに分けて詳しく説明します。死化粧の工程を誰がするのか?から順序を追って、より細かく解説していき全体のイメージをつかみ易くしています。
1:死化粧は誰がする?
死化粧は、主に病院の看護婦さんや、葬儀会社のスタッフの方がします。また、前述したとおり故人の強い遺志があれば、家族や親戚の人がする場合もあります。
故人の尊厳を損なわないように、ほとんどの施設では熟練の専属スタッフが、湯灌や死化粧を担当しています。
2:医療器具を抜去する
死後、体の血液は凝固しにくくなります。体内の分泌液なども、医療器具の細かな隙間から漏れる恐れが多々あります。体にある心電図の器具や、点滴の針、人工呼吸器などは、故人が亡くなれば取り外します。
また、ペースメーカーは火葬の際に、爆発の恐れがありますで、医師に取り除いてもらいます。ただし、特に必要がなければ、金属のプレートや金歯などは、取り外さないのが慣習となっています。
3:排泄物や内容物を出す
火葬までの間に、不要な感染症や、脱糞や失禁、腐敗による臭いを防ぐためと、遺体の腐敗の進行スピードを遅らすために、体内から排泄物や内容物は前もって出しておきます。
そうすることにより、死化粧をするスタッフの方や、葬儀に訪れる方の安全も守られて、快く最後のお別れができるでしょう。
4:口腔をケアする
死後硬直が始まる前に、内容物だけではなく口腔内も清掃します。ガーゼや歯ブラシなどで消毒と清掃して、残った水気も丁寧に拭き取って、異臭と雑菌の繁殖を防ぎます。
頬がげっそりとこけていたら義歯などを詰めて、自然な輪郭に整えます。口の中は顔の輪郭と関わっていますので、死化粧前の大事なケアの一つです。また、唇がガサガサに乾燥していたりひび割れていたならば、ワセリンやリップクリームなどを事前に塗っておきます。
5:全身の清拭を行う
口腔のケアまでが終わると、次は体の清めに入ります。まずは髪をドライシャンプーで洗ってから、体の各所をぬるま湯で丁寧に拭いていきます。ただし、人や宗派によっては湯潅をして清めてから拭く場合もあります。
死後硬直が始まると、体幹がずれて同じ体重でも重く感じる重作業ですが、遺体を綺麗にしてあげる非常に大切な作業です。そして、洗浄が終わりますと、鼻や耳に肛門など各所に綿を詰めます。
6:服を着替えさせる
ここまでの手順で、体も綺麗になり、体の老廃物も出ないように丁寧にケアしてきました。死化粧前に洋服を白装束を着せてあげるのが一般的です。ですが、故人の遺志や遺書での指示がある服や、もしくは遺族の方が故人に対する思い出のある服に着替えさせる場合もあります。
また、国や文化、宗教の違いにより、日本の白装束がワールドスタンダードではない事も覚えておきましょう。ただ、世界中どこでも死者を尊ぶ気持ちは同じです。
7:整容・化粧を行う
ここまでの工程が終了した段階でも、死後硬直が解けてないケースが多いでしょう。ちなみに硬直が解けるのは、外気の温度にもよりますが90時間程度が目安です。
なので、硬い体を丁寧に整容して、四肢を整えて、顔を上向きにします。最後の仕上げに死化粧を施して、納棺の運びとなり完了します。
ご遺族の意向が大切
例えば、男性の死化粧ならば、髭を剃るのが基本ですが、故人が生前に髭に特徴や思い入れがある場合ならば、遺族の人も剃らない顔に対しての思い出が多々あるでしょう。また、故人が女性ならば、生前に化粧を極端に嫌っていたり、メイク方法に極端な拘りがある場合もあります。
さらに子供が亡くなられた場合も、死化粧を施すかどうかはデリケートな案件となるでしょう。生前をよく知る遺族の意向を尊重した死化粧が大切になります。
湯灌・エンバーミングとの違い
湯潅は、遺体をぬるま湯で洗い清めることで、エンバーミングは、遺体を修復したり、長期間保持するための処置を施すことです。
湯潅は仏教圏で、古来の中国や日本に昔からある手法であり、エンバーミングは南北戦争のときにアメリカで発達した手法であり、どちらも、遺体を保持する目的で行います。
湯灌
湯灌とは、「逆さ水」と呼ばれる、水にお湯を加えて作ったぬるま湯で、遺体を入浴させったり、遺体を綺麗に拭いたりすることです。
昔は近親者が自宅やお寺で行うのが主流だったが、現代では主に葬儀会社が行います。自宅で葬儀を行うときは、浴槽を積んだ専用の車を呼んで行うこともできます。
エンバーミング
エンバーミングの方は、遺体が大規模な損壊を受けていても、修復を施して、元に近い状態に戻します。残された遺族は、葬儀のときに遺体の損傷が激しければ、その心労は計り知れません。遺族の心的負担を和らげるために、南北戦争のときにアメリカで発展した、広い意味では西洋版の死化粧です。
また、遺体を搬送する際の移動距離が長いので、防腐措置や衛生状態を保つための、殺菌や保全液を入れたりします。
死化粧は故人を気持ちよく送り出すもの
故人とのお別れのに来た、遺族や友人、知人が最後に対面する顔が、悲壮だったり、損壊が激しかったら悲しみや、やり切れない思いで胸の中が一杯になるでしょう。
ですが、死化粧を施して、故人の顔をより良く見せる事により、別れの悲しみを少しでも和らげらます。そして、厳粛な気持ちで死を受け止めれます。
別れは悲しいものですが、しっかりと受け止めて送り出してあげて、乗り越えていきましょう。