今回は法事(ほうじ)についての特集です。法事は、故人の冥福を祈って供養を行う仏教における儀式です。
法事は、どのようにして執り行われるのでしょうか。ここでは、法事を行う際の日取り・準備の仕方・香典・お供えのほか法事に呼ばれた際の基本的なことを解説していきます。
法事(ほうじ)とは
法事(ほうじ)は現在では、故人の供養を行う仏事全般を指すようになりました。
本来仏教では、亡くなってからの追善供養(後述)を四十九日までの間、七日ごとに行います。けれど時代の流れもあって、参列者のことを考慮し、初七日と四十九日の法事を行うことが一般的になっています。
二七日(ふたなのか)、三七日(みなのか)、四七日(よなのか)、五七日(いつなのか)、六七日(むなのか)は省略されるようになりました。
準備するもの
法事の準備で必要なことは、参列者の人数を正確に把握しておくことです。そのために、事前に親族・友人・知人に案内状を出して出欠を確認しておく必要があります。法事の際の会食の手配・引き出物の数が関係してきます。
案内状には、法要(後述)のあとのお斎(おとき:後述)の用意の有無を必ず明記しておきましょう。案内状は、往復はがきか、封書で返信用のはがきを同封するのがです。
日取りの決め方
四十九日のあとは、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌があります。それらの法事(法要)は故人の命日に行うのが正式ですが、参列者のため、命日の一ケ月前から命日までの間の土・日に行われるのが一般的です。
先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口の六曜(ろくよう・りくよう)とは無関係なため、法事(法要)の日取りは、菩提寺との相談で決定します。
法事(ほうじ)のおおまかな流れ7つ
法事は、法要→お墓参り→お斎(後述:おとき=会食)という流れで行われます。喪主は花、供え物、線香などを準備する必要があります。
多くの方が誤解しているのが、法事と法要です。法要は、遺族が故人を偲び、冥福を祈るための追善供養(ついぜんくよう)です。
追善供養とは、故人の行いが善行(良い行い)となり、極楽浄土に往生できるという考え方です。一方法事とは、法要からその後の会食までの流れを指します。
手順1:日程を決める
法事の日程決定は、余裕を持って2~3ヶ月前から始めましょう。遺族・親族の都合より、檀家である僧侶の予定が最優先です。初七日や四十九日は施主に余裕はありませんから、現在では、お葬式と一緒に行うことも少なくありません。
法事の日程の決め方は、故人の命日に合わせることが好ましいのですが、平日の場合はなかなか参列できません。そのため法事は、故人の命日に近い土・日・祝日に行われることが多くなっています。
手順2:予算を決める
法事の予算は、施主が参列者の会費(御仏前)を10,000円と設定しているならば、食事代、お返しの品込みで10,000円の範囲内で行うのが一般的です。
食事代は、3,000円~5,000円の料理が最近の主流ですが、飲み物代が別途かかるので注意が必要です。お返しの品は、日常で役立つ味付け海苔、お茶漬けセット、洗剤セットなどが好みに左右されない品としてがあります。お返しの品の予算は2,000円~3,000円です。
手順3:御霊前・御仏前を用意する
御霊前は通夜・葬儀の際の香典で、故人との関係・付き合いの深さ・年齢・地位・地域性によって異なります。5,000円~100,000円が一般的です。
一方御仏前は、御霊前とは異なり、故人や親族と付き合いの深かった人が法事の際にお包みします。一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌など法事は何回もあります。法要後に、お斎(おとき=会食)がありますので、10,000円~30,000円が一般的です。
御霊前と御仏前の違い
御霊前は、宗教の壁を超えて使用できる「表書き」です。一方、御仏前は「仏の前」と記載するので仏式のみで使用される表書きです。
仏教では、人は亡くなると霊になり、49日間の旅に出て仏の元へ行くとされています。その49日間の表書きが「御霊前」です。49日間の旅が終わり、故人が仏になった時に使用するのが「御仏前」という表書きです。
49日までは「御霊前」を用い、49日以降の法事では「御仏前」と使い分けます。
手順4:読経
読経とは、僧侶(仏教徒)が経文を音読することを言います。読経は故人のためだけのものという誤解がありますが、参列者への説法という意味も含んでいます。
参列者が読経を聞くことには、日常の生活を潤いのあるものにし、生きていく上での苦しみや悩みを軽減させ、より幸せな人生に導くという目的が読経にはあります。
手順5:お焼香をする
お焼香には4つの意味があります。一つ目は仏様への敬意です。二つ目は、清浄な仏様の前に座らせていただくために自分自身を清めるという意味があります。
三つ目は、立ち上がる香煙の香りが極楽浄土を連想させます。仏壇は極楽浄土のジオラマです。すべての人に公平に行き渡る仏の慈悲です。
四つ目は、燃え尽きた灰から無常を学びます。良い香りで燃えていた香も、やがて冷たい灰になります。命を終えて消えゆく人に例えています。
手順6:会食の前の挨拶
会食(お斎)前の挨拶では、必ずお礼の言葉から述べましょう。故人のために時間を割いていただいているので感謝の気持ちを込めた挨拶が大切です。
「本日はお忙しい中、故人○○のためにお集まりいただきありがとうございました。」と始めましょう。天気が悪い場合は前に、「生憎の天気にもかかわらず」や「お足元の悪い中」を初めに付け加えれば問題ありません。
手順7:お斎(おとき)
お斎(おとき)は法事の際、法要が終わったあとに出される会食のことです。僧侶の読経が終わった後に振舞われるのが一般的です。
お斎では、生ものを避けた精進料理が多いですが、出される料理は地域ごとに異なります。寿司やうな重などが出されることもあります。お斎は、読経してくれた僧侶・参列者への感謝、故人を偲ぶ行事です。
法事(ほうじ)の挨拶に盛り込む内容の例
法事では、法要後次のような挨拶が必要になります。故人、僧侶、参列者への誠意を示すこと、故人への想いを述べること、会食(お斎)へスムーズに繋げる挨拶です。施主は法事が持つ意義・目的をしっかりと把握し、適切な言葉を選ばなければなりません。
謝意をしっかり伝える
日本酒は「お神酒(おみき)」とも言われます。法事には欠かせません。日本には神仏に対するお供え物という考え方があるからです。法事においては、施主は故人に対しても、読経してくれた僧侶に対しても、参列者に対しても「誠意」を示す必要があります。
法事の際は、乾杯ではなく献杯(けんぱい)という言葉を使用します。献杯の挨拶は、故人に最も縁の深かった人が指名されます。
故人への想いを述べる
挨拶に故人への想いを込めることは大切です。亡くなってから日が浅い場合の法事の席では、「通夜・葬儀の際には、皆様には一方ならぬご厚情を賜り、」と感謝の気持ちを伝えましょう。
一周忌以降なら、日常の生活を取り戻せたこと、故人への回顧と共に見守っていただいたお礼を伝えると良いでしょう。三回忌以降では、故人の想い出話や現況を語り合いましょう。重苦しい雰囲気をいつまでも引きずるのは良くありません。
会食へ繋げる言葉
会食(お斎)に繋げる挨拶は、参列者が会食や歓談をスムーズに始められるように和やかなムードを作り上げることが大切です。明瞭簡潔な挨拶を心がけましょう。
「大したおもてなしもできませんが、お時間の許す限りゆっくりお過ごしください。本日は誠にありがとうございました。」と結べば問題はありません。
法事前の備えは重要
法事とは仏事全般を指します。法事は日本の仏教における素晴らしい慣習です。その度に、故人を偲ぶことができるからです。
法事は、通夜・葬儀・四十九日、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌などが主なものですが、「月命日」を重んじる地方・地域もあります。
故人と自分との関わりがあったから、今の自分が「生かされている」という感謝の気持ちを法事に込めましょう。